広告文を作成する際には、「キーワードを広告文に含める」。
これは、基本的かつとても大事なテクニックです。初めに整理をしておくと、この施策が重要とされるのは、次の結果を持たらすからです。
- クリック率が向上する。(CV獲得の機会が増える)
- 品質スコアが向上する。(クリック単価が下がる)
最適化が進めば、当然広告のパフォーマンスは向上します。
しかし、リスティング広告の仕組み上、この施策をとことん追求すると、たくさんのキーワードを細かく広告グループで切り分け、広告文を紐付けていくことになります。
ここで注意しなければいけないのが、大量の広告グループを作成し過ぎてしまうことです。詳細は本文に譲りますが、機械学習を進める上では、広告グループが散らばり過ぎているのは得策ではありません。
機械学習とは
人間が持つ学習にあたる仕組みを機械で実現する技術・手法を指します。Google広告では、機械学習が進むほど、成果が向上します。
つまり、「キーワードを広告文に含める」ことを最優先に考え、広告グループを細かく切り分けていくと、逆に違った面(機会学習を加速させて、成果を上げる)では最適化が進まないジレンマに陥るのです。
Adwordsでは日々アップデートが行われ、便利な機能がたくさん追加されています。しかしそれ故に、一方の施策を取ると、同時にもう一方の施策が立たない「トレードオフ」が起こり得るシチュエーションが、結構あるのです。
先述したものは、その典型事例と言えます。しかし、どちらも成果を出す上では大切な部分ですので、簡単には妥協できません。
そこで今回は、「広告文をにキーワードを含める重要性、その上で機械学習を加味した広告グループ設計」について、詳しく解説していきます。
CONTENTS
広告文にキーワードを含めることが大切な理由
クリック率が向上する
広告文にキーワードを含めると、クリック率が向上します。
まず、我々は検索エンジンを活用する際に、「自分が打ち込んだ検索ワード(検索語句」を無意識レベルで探しています。だから、検索ワードが含まれる広告文が目に入ると、自分の求める「答え」があると認識しやすく、そうでない広告よりも、クリック率が高まるのです。
例えば、美容クリニックへの集客で考えてみましょう。二重手術を検討しているユーザーは、「二重手術」と検索エンジンにキーワードを入力します。その際に、下図の広告が表示されたらどうでしょうか。
この場合、マッチングしていないわけではありませんが、ユーザーの目線にぴったり止まる、とも言い難いです。それでは、次のような広告が表示された場合ならいかがでしょうか?
先ほどの広告に比べて、ユーザーの「注目」を引きやすいことに、異論はありません。つまり、この場合はクリック率が高まります。
さて、クリック率が高まれば、Google広告では好循環が働きます。
- より多くのユーザーをサイトへ集客できる。
- その分だけ、CV獲得の機会が増える。
上記を踏まえるだけでも、「広告文にキーワードを含める」ことは、基本的かつ大事なポイントと言えるでしょう。
なお、クリック率の向上は重要ですが、クリック数を稼ぐことを目的化してはいけません。あくまで、CVの達成がゴールですので、無理やりクリックさせることは厳禁です。正攻法にクリック率の向上を図りましょう。
品質スコアが向上する
広告文にキーワードを含めれば、品質スコアが上がります。
リスティング広告の成果を出す上で、品質スコアの向上は避けて通れません。下図をご覧ください。
広告ランクという概念が出てきました。広告ランクは、掲載順位が決まる大きな要因であり、この数値が高いほど、広告を上位表示できるのが仕組みです。この数式に則れば、品質スコアが向上することで、次の結果を見込めます。
- 品質スコアが向上すると、広告ランクが上がる。
- 広告ランクが向上すれば、今までよりも入札を下げることができる。
- 結果的に、掲載順位を維持しつつも、クリック単価が下がる。
上記のプロセスが、一つのキーワードに対して働くわけです。つまり、キーワードの数が多いほど、品質スコアが向上し、広告の費用対効果が改善されます。
では、なぜ広告文にキーワードを含めると、品質スコアが向上するのでしょうか?
これは、Google広告の仕組みを考えることで理解が進みます。Google広告では、ユーザーの検索意図に沿うように、「検索されたワード(検索語句)」に関連がある「広告文」が表示されるようになっています。
そして、この「関連性」を判断する一つの基準に、「キーワード」が使用されているのです。キーワードが含まれている広告文は、ユーザーの検索(問い)に対する「答え」だと考えることができるからです。つまり、これを満たす広告文は、Googleから「価値の高い広告」だと判定してもらいやすい、というわけです。
ここまでの内容をまとめましょう。
- キーワードを広告文に含める。
- すると、Googleから、ユーザーの目的に沿った広告だと判定してもらいやすくなる。
- その結果、高い品質スコアを付与される。
なお、品質スコアについて以下の記事で詳細に解説しています。ご参照ください。
広告グループを細分化し過ぎてはいけない
「広告文にキーワードを含める」ことは、とても大切であることが分かりました。しかし、実は注意点もあります。
と言うのも、先述の理屈で言えば、キーワード毎に広告文を用意した方がいいことになり、その分だけ広告グループを細かく切り分ける、となりがちだからです。
実際に、上記のように広告グループを設計される運用者の方は、多くいらっしゃいます。
この施策が、違う観点から見ると「適切」とは言えないのです。少し分かりにくい部分ですので、一度リスティング広告の仕組みを整理しましょう。
まず、リスティング広告は、キーワード、広告文をセットにした「広告グループ」を最小単位として運用を行います。広告グループには複数のキーワードを登録でき、それらのキーワードで検索が行われた際に、表示させる広告文をを設定するのが仕組みです。
さて、本題に移りましょう。広告グループの仕組み上、広告文にキーワードを含めた方が適切なら、先述の通り、大量の広告グループを用意することになります。
上記は、キーワード数が多い場合に、よく起こりえます。
例えば、シャンプー専門のECサイトで考えてみましょう。このサイトが、男性専用のシャンプーを取り扱っているとします。すると、ここまでの内容に則れば、次のような広告グループの作成がイメージされます。
加えて、このサイトでは、女性専用のシャンプーも扱っていることも分かりました。ですので、専用の広告グループを作成。
更に、このサイトでは他にも、サロン専売シャンプー、育毛シャンプー、市販用シャンプー、スカルプシャンプー、…etcと、大量に商品を揃えていることが判明しました。
ヘアシャンプーのWebマーケットはここまで細分化されていないのですが、主題の内容を分かりやすくするために、今回はこのように進めていきます。実際には、自社の商材に当てはめて考えてみてください。
となると、
・サロン専売用の広告グループ。
・育毛用の広告グループ。
・市販用の広告グループ。
・スカルプ用の広告グループ。
・…etc
といった形で、広告グループをとことん細かく分けていけば良いのでしょうか?
答えはNoです。その理由は、広告効果を高めるための機械学習が進みにくくなり、この観点での「最適化」が進まなくなるからです。
機械学習に必要なものは、データの「量」と「バリエーション」。しかし、Googleの仕組み上、広告グループが細かく分かれ過ぎると、データが分散され、機械学習が進みづらいのです。
さて、この機械学習が遅れると、自動化運用のパフォーマンスが期待できません。自動化運用がうまく進めば、以下のメリットが得られます。
- CPAを担保しながら可能な限りCV数を獲得する。
- CVが見込める場合は入札を強め、そうではない場合は入札を弱める。
- 決められた予算の中で、最大限CVを獲得できるように、入札が調整される。
- 検索された検索語句に対して、適切な広告文が表示されるようになる。
- …etc
成果を飛躍させるには、もはや自動化は必須です。しかし、それには機械学習が適切に行われる必要があり、広告グループを切り分け過ぎるのはこれに反してしまう、ということなのです。
事実、Google自体も、アカウント構造をなるべくシンプルにまとめることを推奨しています。
ですから、キーワードを広告文に含める、という一面だけ(メリットは大きいのですが)を見て、最適化を進めない方が無難と言えます。
運用効果を向上させるための広告グループ設計
では、ここからはどのように広告グループを設計していけばいいのか、について考えていきましょう。
リスティング広告は、成果を決める「変数」が多いので、どうしても他の要因を考えて、バランスを考えた上で施策を打たなければなりません。
- 可能な限り、広告文にキーワードを含めたい。(品質スコアを向上させてクリック単価を下げ、同時にクリック率を上げたい)
- 可能な限り、広告グループをシンプルにして、機械学習を進ませたい。(自動化の恩恵を受け、広告のパフォーマンスを上げたい)
上記の二つをなるべく満たすために、私は次のように広告グループを設計します。
・高品質なキーワードは別の広告グループに分ける。
・それ以外のキーワードは、カテゴリー別に一つの広告グループに集約させる。
詳しく見ていきましょう。
なお、このように複合的に考えて、アカウント設計をする運用者は少数派です。ですから、しっかり仕組みを理解した上で、自分で「カスタマイズ」していくことで、競合と差をつけることができます。
高品質なキーワードは別の広告グループに分ける
高品質なキーワードには、一つの広告グループを与えてあげましょう。
先ほどの、シャンプー専門のECサイトを事例に考えてみます。仮にこの商材では、「女性シャンプー」関連のキーワードが、成果に繋がりやすいワードだとします。
成果に繋がりやすいかどうかは、「実際の商品力」や「ランディングページの訴求力」等にもよって決まってきます。
この場合、「女性用シャンプー」関連のキーワードは、一つの広告グループに切り分けてしまうのです。
このような形にし、「女性シャンプー」を含んだ広告文を作成すれば、当然クリック率も高くなり、品質スコアも向上します。結果的に、次の好循環を起こせます。
- CV獲得の機会がより増える。(クリック率が高まるから)
- クリック単価が下がる。(品質スコアが向上するから)
- 加えて、CV率もいい。(成約しやすいワードだから)
- 結果的に、CPAが下がり、CV数も増える。
更に、専用の広告グループで切り分けていますので、女性シャンプーに関する広告文の「バリエーション」を出しやすくなります。
広告文は複数作成していくことで、より広告の最適化が進みます。高品質なキーワードにおいては、機械学習の観点よりも、広告グループを分けてしまい、広告文(キーワードを含んだ)の最適化を図りましょう。
もっと言えば、専用の広告グループを作成することで、「入札の最適化」「特化ランディングページの訴求」も進めやすくなります。ここまで手を加えると、パフォーマンスはより向上します。これらについては、内容が多岐に渡るので、別の記事で詳細を解説します。
なお、広告文を複数作成する理由については、以下の記事で詳細に解説しています。ご参照ください。
それ以外のキーワードは、カテゴリー別に一つの広告グループに集約させる
現段階では、高品質とは言えない(成果の可否が分からない)キーワードは、ある程度のカテゴリーで区切り、一つの広告グループにまとめましょう。
その上で、それぞれのキーワードを含んだ広告文をできる限り作成します。
このような構成を取ることで、得られるメリットは複数あります。まず、Googleのシステムにより、それぞれの検索キーワードに対して、「適切な広告文」がある程度は表示されるようになります。
更に、一つの広告グループに、「データ」が集約されるので、機械学習が進みやすくなるのです。先述の通り、機械学習が進めば、自動化機能の効果が発揮されやすく、広告のパフォーマンスが向上します。
私は、機械学習を重視した場面で、次のプロセスを実施します。
- ある程度のまとまった「キーワード群」を、一つの広告グループに入稿する。
- 入稿したキーワードを含む広告文を、可能な限り広告グループに紐づける。
- その結果、シンプルな広告グループに編成されるので、機械学習が進みやすくなる。
- 機械学習が進みと、成果が向上しやすくなる。
- 一定期間が過ぎると、広告グループの中で、「高品質なキーワード」が現れる。
- 高品質なキーワードは、別の広告グループに切り分けて、違う施策面から更に最適化をかけていく。
- 上記のプロセスを繰り返す。
- リスティング広告のパフォーマンスが向上する。
機能がどれだけ増えても、本質的な仕組みを理解していれば、成果に結びつけることが可能です。
まとめ
今回は、「広告文をキーワードに含める重要性、機械学習を加味した広告グループ設計」について解説をしました。
Google広告は日々機能がアップデートされ、実施できる施策の選択肢が増えてきています。しかし、一つの面から有効であっても、「他の観点」から見ると、デメリットとなるケースが結構あります。
ですから、「商材の特徴」、「運用の状況」、「広告予算」等と照らし合わせて、バランスを考えて対応していきたいものです。その結果、リスティング広告から大きなリターンを得ることができます。
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広告文を立案する際には、本記事で解説したポイント以外にも大事なことがあります。それは、広告文に「セールスポイント(自社の強み)」を打ち出し、検索ユーザーにメリットを提示することです。加えて、広告文に「行動を促す一言」を付け加えれば、ユーザーの行動(クリック)へのモチベーションを、更に上げることができます。これらに関しては、以下の記事で詳細をまとめていますので、ご参照ください。