メディアサイトの集客方法が変わりつつあります。
SEOから広告運用、SNS、Youtubeへと移行するメディアが増えていますね。特に目立つのがリスティング広告へのシフトチェンジでしょうか。SEO同様に検索エンジンからの集客であるため、イメージしやすいからでしょう。
しかしメディアサイトで成果を出すのは簡単ではありません。先行者が「資金力」と「特単価」をテコにして、上位の広告枠を独占しているためです。とりあえず参入する程度ではCPAが高騰し、撤退を余儀なくされる世界。
参入メディアの増加や、Yahoo!広告がアフィリエイトサイトを掲載禁止としたことも、競争を激化させている一因。
こうすれば成果が出ると言う絶対解はなく、サイトに合った戦略が必要です。端的に言うと、プロでなければ勝負できない市場になりつつあります。ハードルは高いものの、一定ラインを越えれば大きなリターンを得られる。そんな分野でしょうね。
今回は「金融メディアサイトへの集客の成功事例」を紹介します。
CONTENTS
金融メディアサイトへの集客
「自社で運用をしましたが成果が悪く・・・プロにお願いするのが一番かと思いまして」
Webマーケティング企業から運用のご相談を頂きました。内容は金融メディアサイトへの集客。消費者金融サービスへの申し込み(送客)でマネタイズしているアフィリエイトサイトですね。
Googleコアアルゴリズムのアップデートを受け検索順位が下落。その影響で収益が下がり、リスティング広告を始めたわけです。特別単価が高いサイトではあるものの、順位が戻らないと以前の収益は見込めないようでした。獲得件数が減り続けば、特単まで下がってしまう模様。
特別単価の仕組み
アフィリエイトでは案件により成果の報酬額が決まっています。しかし多くの成果を出すと一件あたりのフィーが上がり、特別単価を貰えます。
こちらの企業様は育毛剤の比較サイト(現在は売却済み)の運営経験があり、その集客を私が担当していました。広告運用のパフォーマンスに満足頂いており、その実績が今回ご依頼頂いたきっかけです。
このサイトはリスティング広告の目標を以下に定めていました。
- 広告予算:月額180万~250万。
- 目標CV数:250件以上。
- 目標CPA : 7000円。
そして実際の成果がこちらです。
- CV数 : 112件。
- CPA : 16000円。
私は早速頂いたデータの分析から始めました。細めに運用されていたので、実は問題点を見つけるのに時間がかかりました。しかしうまくいかない時はどこかにボトルネックがあるもの。アカウントのデータ以外にも、サイトやSEOのデータを読み込み、商材の特徴も理解する。すると道筋が見えてきます。
私は内容を整理し、クライアントに戦略を提示しました。
消費者金融のサービスは季節によって需要のばらつきがあるため、月額予算が変動します。
既存アカウントの問題点
目標と実際の成果に大きな「乖離」があった原因は何だったのか。そもそも無理な数字を基準としていたのでしょうか?
そうではありません。原因はアカウントの構造にありました。簡単に言うなら噛み合わない戦略を取っていたために、小手先の運用では追いつかず、目標数値に届かなかったのです。
部分一致を多用していた
既存アカウントでは部分一致を多用していました。
もちろん部分一致自体が悪いわけではありません。拾える検索語句が多く、新規顧客開拓の手段に向いています。
しかし運用の初期段階、つまり最適化の途中で多用すると失敗しやすい側面も。拾うワードの幅が広すぎるため、潜在層にまで広告を届けがちです。
つまりCV率が良くないので、CPAも悪化しやすいのです。それゆえ本来は、獲得単価を抑えられる状態で使用するのが望ましい。とりわけCPA重視なら。
要するに成果を安定させてから活用するべきでした。もちろん不要な検索語句をしっかり除外できれば別ですが、この案件ではそうもいきません。
例えばキャッシング関連のワードを部分一致で設定すると、通常のキーワードに比べて、拾う検索語句の幅が遥かに多いのです。これが何を意味するのか。それは不要な検索語句を除外しても、完璧には除外し切れないという事実です。
もちろん既存アカウントでも除外設定は行っていました。しかしアカウントが広告費を消化しようと、どんどん違う検索語句を拾うので、作業が追いつかなかったのです。
除外キーワードとは
広告を表示させないワードのこと。
その結果CVに繋がらないことも多く、CPAが高騰したわけです。つまり端的に言えば、部分一致の活用自体がマッチしていなかったと言えましょう。
関連リンク:
部分一致の仕組みやメリット、デメリットについては下記の記事で解説しています。ご参照ください。
予算が適切に配分されていなかった
大きなボトルネックがもう一つ。それは「予算配分」のバランスが悪かったことです。
既存アカウントでは先述した部分一致や、成果の出ている絞り込み一致等を、同一のキャンペーンにまとめていました。いわゆるシンプルなアカウント構造ですね。
部分一致を多用していたのはCVワードを見つけ、絞り込み一致で追加していくためだったようでした。有効なやり方ですが、今回はCPAの高騰に耐えられなかったわけです。
機械学習が進んでいる現在、シンプルなキャンペーン構造は良しとされ、Googleも推奨しているほど。入札や広告文の最適化が進みやすく、パフォーマンスを発揮しやすくなるためです。
しかしあくまで程度の問題であり、唯一解ではありません。前項の内容を覚えてますか。部分一致で配信した結果、拾う検索語句が多すぎたのでしたね。それゆえ同じキャンペーン内で無作為にマッチタイプをまとめると、部分一致での消化ペースがほとんどを占めてしまいます。
その結果どうなるか。部分一致の拡張機能によって、パフォーマンスが悪い検索語句に、多くの広告費が消化されていました。
逆にCVワードでは日予算が足りず、広告表示の機会が半減していたのです。
何がいけないか分かりますか。本来なら予算の配分を逆にするべきでしょう。
しかし同じキャンペーンにまとめているので実現できず、効率が悪いまま配信されていたわけです。
Google広告の仕組み上、日予算はキャンペーン単位で設定します。
CPAの悪化を防ごうと入札の調整はされていました。しかしこれでは予算配分の問題を解決できません。大きな矛盾は小さなプロセスでは取り返せないのです。従ってどれだけ頑張っても、運用が好転されることはありませんでした。
実施した改善策
ここからは私が実施した改善策を見ていきましょう。
今回取ったアプローチは「ボトルネックの改善」と「攻めの施策」を両立したこと。大枠の施策は以下に集約されます。
・無駄キーワードの除外。
・予算配分の最適化。
・マッチタイプの最適化。
・動的検索広告の活用。
・検索リマーケティングの実施。
この5つ。詳しく見ていきましょう。
無駄キーワードを徹底的に除外
最初に行ったのは無駄キーワードの除外です。
基準は獲得単価が高騰しているかどうか。管理画面上のCPAが3500円以上なら全て停止しました。この作業を経ることでCPAを担保しやすくなります。
サイトの許容CPAが7000円にもかかわらず、なぜ3500円以上(管理画面で)のキーワードを停止したのか。この箇所について触れておきましょう。
実はアカウント上のCVポイントは「遷移先サイトへのボタンクリック」に定めていました。しかしビジネス上で広告効果を測るCVは「成約地点」。つまり「管理画面上のCV」と「実際のCV」で定義が異なっていたのです。
関係性を整理すると、管理画面上でCVしたユーザーの一部が、キャッシングサービスの申し込み(本当のCV)をすることになります。
アカウント上のCVはあくまで中間地点。つまりゴールではないため、実際のCPAよりも低い値を担保しなければなりません。このような背景があり、まずは管理画面における獲得単価を下げるため、除外作業から始めました。
除外ばかりしたらビジネスチャンスが減るのでは?と思うかも知れませんね。しかし始めはこれでいいのです。ボトルネックを解決するのが優先だからです。
赤字を防ぐには小さく始める。そして黒転させた後に規模を大きくしていく。まずは小さくても勝ちに徹することが、大きなリターンを得るための秘訣です。
関連リンク:
なおGoogle広告の除外キーワードについては以下にて解説しています。ご参照ください。
予算配分の最適化
新たなキャンペーンを作成しました。
そして既存アカウントにあるパフォーマンスの良いキーワードを、新キャンペーンに移し替える。このように構成を変えれば、予算配分を調整できるようになります。
前述の通り既存アカウントでは、CVワードのインプレッションが半減していたのでしたね。この現象は「インプレッションシェア損失率(予算)」で確認でき、この割合が大きいか(表示機会が減っているか)で判断します。
インプレッションシェア損失率(予算)とは
キャンペーンに設定している日予算が、想定される額よりも少ないために、インプレッションに制限がかかっている状態。
改善の手段はキャンペーンの日予算を上げること。するとインプレッションが増えます。
しかし今回は全体の表示回数を増やすのではなく、CVワードのインプレッションだけを多くしたい。なぜか?それはパフォーマンスが見込めないキーワードの表示機会を増やしても、成果は改善されないからです。
従って新たなキャンペーンにCVワードを移す。その上で日予算をあげる。このプロセスを通せば効率よくインプレッションを増やせませんか。結果CV率が高まり、CPAが改善されたことは言うまでもありません。
関連リンク:
インプレッションシェアの仕組みや改善方法は下記にて解説しています。ご参照ください。
マッチタイプの最適化
予算配分を調整したらマッチタイプの最適化も図ります。
「部分一致」から「絞り込み」「完全一致」に変更しました。入札を調整しやすくなるためです。丁寧に見ていきましょう。
前項で作成した新キャンペーンにはパフォーマンスの良いキーワードが設定されていますね。それゆえ広告の露出を増やすべきであり、入札を高めて、掲載順位を上げるアプローチが噛み合います。クリック単価が多少高騰してもCV率がいいので、CPAを維持しやすいためです。
しかし部分一致を使っているとこうはなりません。多くの検索語句を拾ってしまうゆえ、無駄ワードの掲載順位まで上げてしまうからです。結果CVには至らず、CPAが悪化します。
つまり今回のケースでは部分一致以外のマッチタイプを使うことが望ましい。その上で入札を上げるのがベストなわけです。
おさらいしましょう。まずはキャンペーンの日予算を上げてビジネスチャンスを増やす。そして適切なマッチタイプを選び、入札を高め、広告を目につきやすくする。広告運用は工夫するほど成果が向上します。
最終的にこのキャンペーンでは、管理画面上のCPAが1200円前後で維持されました。上出来でしょう。
関連リンク:
なお絞り込み一致に関しては仕様から活用方法まで、以下の記事にまとめています。ご参照ください。
完全一致も同様に下記のページで解説してます。併せてご参照ください。
動的検索広告の活用
続いて動的検索広告(DSA)を活用しました。
動的検索広告とは
入札したキーワードではなく、Webサイトのコンテンツに基づき、自動で広告を表示する機能。
既存アカウントでは、部分一致で配信対象を広げ過ぎたため、獲得単価が高騰しました。
しかしキャッシングを利用するユーザーの検索意図は多岐に渡ります。それゆえ幅広い検索語句でCVが発生するのが特徴。つまり部分一致なしではCV数が減ってしまうため、使わざるを得なかったのです。
このジレンマを解決するために私はDSAを使用しました。説明しましょう。
このメディアには「主婦訴求」のページが多くあります。それゆえ「主婦 借りる」といった検索語句からCVが起きていたわけです。
そこで「主婦関連」のページを1グループにまとめ、「主婦訴求」の広告文を用意し、動的検索広告に紐づける。
DSAでは「広告見出し」は自動で作成されるので「説明文」を用意することになります。
するとどうなるか。Googleが自動で主婦関連の検索語句を拾い、主婦訴求の広告文を見せ、主婦用のページに検索ユーザーを送客します。
つまり拡張させるワードの範囲を狭めつつも着実にニーズを拾えるわけです。とりわけ、見込み客を適切なページへ送客できるのがDSAの強みでしょう。
この作法のパフォーマンスはいかがなものか。アカウント上のCPAを500円以内で収められることもあり、獲得単価の基準では一番のパフォーマンスを発揮しました。
動的検索広告はニッチな検索語句を拾えるので、クリック単価を抑えやすい傾向にあります。
そのためサイトコンテンツが許す範囲、CVを見込める範囲にてDSAを横展開。一例を挙げると「学生関連」で実施しました。
結果は「学生ローン 2万円」「ショッピングローン 学生」といったニッチな検索語句をピンポイントで拾いしっかりCV。
学生訴求で攻めるなら未成年を配信対象から外します。管理画面上ではCVしても、実際には借り入れができないので、成果(本当のCV)に含まれません。結果を出すには細かい調整も必要ということです。
以上のようにランダムに検索語句を拾うのではなく、範囲を狭め、精度よく拾っていくスタイルに変更しました。これで部分一致での懸念点を解消できました。
DSAを使用するなら、CV率が悪いページには遷移させないようにしましょう。CPAが悪化します。つまり「不要なページ」を除外しなければなりません。
参照リンク:
なお動的検索広告については下記の記事で解説しています。ご参照ください。
検索広告向けリマーケティングの実施
検索広告向けリマーケティング(RLSA)を実施しました。
RLSAとは
ユーザーがサイトに訪れて離脱しても、その後に検索活動を行うタイミングで、再度広告を表示できる機能。
このRLSAをどう使うのか。それは前述した「新キャンペーン」及び「DSA」で接触したユーザーの取りこぼしを防ぐことにあります。実現させるために取った方法は二つ。
一つ目は「お金借りる 即日」「消費者金融 土日」といったCVワードを、やや入札を高めて配信しました。これらのキーワードは競合も入札をしており、広告枠を奪い合っているのが実状。
実際は部分一致の拡張で配信されています。
そのため掲載順位を上げ、広告の表示機会を増やすのが望ましい。
多少クリック単価が高騰しても問題ありません。サイト訪問済みの検討ユーザーに接触しているため、CV率が高まるからです。その結果CPAが担保されます。
二つ目は獲得単価が高騰しがちなキーワードに適用しました。例えば「生活費 足りない」「給料日までもたない」といったワードに対してです。
これらを検索するユーザーは、消費者金融を利用する潜在層ではあるものの、必ず利用するわけではありません。つまりCVする場合もあればそうでない時もある。これが獲得単価が高い所以です。
しかし金融メディアに訪れたユーザーは、キャッシングに興味があるため、CVを見込めやすいのです。そのためRLSAでアプローチ。
CVの取りこぼしを防ぎました。
RLSAの効果はいかほどのものでしょうか。DSAに比べてCV数は下がりますが、アカウント上のCPAは1000円ほどで落ち着きました。悪くありませんね。
関連リンク:
検索広告向けリマーケティングに関しては下記で解説しています。ご参照ください。
配信の結果
改善策を実施した結果は以下。
- CV数 : 300件。
- 実際のCPA : 6000円。
上々の成果です。クライアントからのフィードバックも良く一安心しました。
まとめ
今回は「金融メディアサイトへの集客事例」を紹介しました。
年々難易度は上がっており、運用の「知識」と「経験」が乏しければ、攻略は難しいかもしれませんね。
予算に見合ったアカウントを構築し、「サイトの内容」に戦略を合わせ、運用レベルまで落とし込むことが肝でしょうか。
時にはサイト側に大きな改善が必要な場合も。「SEO」と「リスティング広告」では適切なサイト構成が異なるからです。
正攻法で攻めるのか、盲点を突くべきか、局所部分に特化するのか。いずれのパターンにせよ「CPAの担保」と「CVの獲得」を両立できれば、大きなリターンを得られます。