「ページ数が多いメディアサイト」や「商品数が膨大なECサイト」。これらの商材でリスティング広告を運用したことがある方は、きっと苦労した経験があると思います。
私もその一人ですが何が辛いかというと、アカウント構造が複雑になりがちで非常に手間がかかる点。
商品ページが多ければその分だけ広告グループを分ける必要があり、「キーワード」「広告文」もたくさん用意しなければなりません。とことん突き詰めると大変なので、アカウント構造をシンプルにすると、今度は成果を出せないジレンマに直面します。
率直に言って、少し大変と言わざるを得ません。
しかしこんな悩みを解決できる機能があります。それがGoogle広告の「動的検索広告(DSA)」。
以下はDSAの特徴です。
- 「キーワード選定」、「広告文作成(広告見出し)」、「ランディングページ選定」が自動で行わる。
- 加えてパフォーマンスも良い。
この仕組みを活用すればページ数が多くても、パフォーマンスを維持しつつも「運用の手間」を削減できます。
今回は「Google広告の動的検索広告」について徹底解説します。
CONTENTS
動的検索広告とは
動的検索広告(DSA:Dynamic Search Ads)はGoogleが入札したキーワードではなく、Webサイトのコンテンツに基づき、自動で広告を表示する機能です。
簡単に言うと「キーワード選定」、「広告文作成(広告見出し)」、「遷移先URLの指定」が自動で行われる、と考えればイメージが進むでしょう。
動的検索広告の仕組み
動的検索広告の仕組みを見ていきましょう。下図をご覧ください。
キーワードではなくWebサイトを登録し、クローラーがそのサイトのコンテンツを解析します。(①)
クローラーとは
検索エンジンがWEB上のファイルを収集するためのプログラムです。
そしてその解析結果を、Googleのインデックス情報に登録。(②)
インデックスとは
クローラーが収集したWEBページ上のデータを整理して、検索エンジンのデータベースに格納する仕組みを表します。
インデックス情報に関連のある検索語句で検索(③)が行われたら、広告文と遷移先URLを自動で生成する(④と⑤)のがDSAの流れです。
なお動的検索広告のパフォーマンスを高める上では、内部SEO対策を実施すると良いでしょう。Webページの「タイトル」や「見出しタグ」も解析の対象になるからです。
動的検索広告のメリット
続いてメリットを見ていきましょう。
多くの検索語句を拾える
DSAを活用すれば多くの検索語句を拾えるようになります。
この仕組みは「CV獲得の機会を増やすこと」と「新たな検索語句の発見」に繋がります。まずはGoogleが公表している以下のデータをご覧ください。
- Googleが毎日処理している検索語句のうち15%は、それまで検索に使われていなかったもの。
上記から読み取れることはどれだけ細くキーワードを設定しても、機会損失を防ぎ切るのは不可能という事実です。
しかし動的検索広告を使えば、検索語句の拾いこぼしを防げるようになるのですね。都度検索されたワードに対して、Googleが必要だと判断した検索語句では広告が表示されるからです。つまりCV獲得のチャンスが大きく増えると言えませんか。
またDSAを使うと思いもよらない「お宝ワード」を発見できます。想定してなかったワードからCVが起きるためです。
Webサイトのページ数が多ければ、どうしても細かいキーワード設定までは手が回りづらいこと、ありませんか。そのような場合でもDSAなら、手が届きにくい「細かいニーズ(検索語句)」を逃しません。
内容をまとめましょう。動的検索広告を活用することで次の結果を見込めます。
- 拾える検索語句が増えるので、CV獲得の機会が増える。
- 思いもよらないCVワードを発見できる。
部分一致よりもパフォーマンスが良い
動的検索広告は全体的にパフォーマンスが良いです。
前項ではDSAで多くの検索語句を拾えるメリットについて解説しました。しかし勘の働く方なら次のように思うかも知れません。
「部分一致と何が違うのか?」
実際にDSAで拾う検索語句は部分一致と似ていることが多く、このような疑問が出るのは当然と言えるでしょう。
しかし注目したいのは「拾えるワードの観点」ではなく「成果の良し悪し」です。動的検索広告を使っていれば気付いている方もいると思いますが、部分一致よりも高いパフォーマンスを出しやすいのです。
これにはしっかりした理由があるのですね。まずは下図をご覧ください。
リスティング広告で成果を出すための大きな要因は「キーワード」、「広告文」、「ランディングページ」に一貫性を出し、それぞれを線で結ぶこと。結果、CV率が高まるのでCPAが改善されるのが王道パターンです。
実は部分一致と動的検索広告では、この3要素の組み合わせ方が大きく異なります。先に部分一致から見ていきましょう。
図のように拾えるワードが増えるだけなので、「キーワード」が「広告文」「ランディングページ」の内容とずれることが大半です。その結果CVが起きても、CPAが高騰しやすいことは想像に難くありません。
上記は部分一致で失敗しやすい一番の理由です。
それでは動的検索広告ならどうでしょうか?
仕組みとして検索された検索語句に対し、「適切な広告文(広告見出し)」が作成され、「適切なWebページ」が遷移先URLに選ばれます。
つまり「キーワード」「広告文」「ランディングページ」の流れに一貫性が出やすく、CV率が上がりCPAを担保しやすいのです。
しかもこのプロセスがあらゆる検索語句に対して自動で働く。これが動的検索広告のパフォーマンスが高い所以です。
関連リンク :
なお部分一致については以下の記事に内容をまとめています。ご参照ください。
動的検索広告の設定方法
実際に動的検索広告を設定していきましょう。
キャンペーンの作成
1.まずは新規キャンペーンを作成し「検索タイプ」を選択。
2.「設定をすべて表示」をクリックし「動的検索広告の設定」を選択。
3.「ドメイン」を入力。(URLではなくドメインを入力してください)
4.「ウェブサイトの Google インデックスを使用する」を選択。
5.その他の設定をして保存。
広告グループの作成
広告グループでターゲティング(遷移先URLの選定)を設定します。
1.「お客様のサイトにおすすめのカテゴリ」「特定のウェブページ」「すべてのウェブページ」のいずれかを選択。
なお上記のそれぞれについて違いを整理しておきましょう。
お客様のサイトにおすすめのカテゴリ
Googleが対象サイトを読み込み、ページの内容ごとにカテゴライズします。そのカテゴリーを選択することで、そこに含まれるWebページで動的検索広告を表示します。
特定のウェブページ
自身でDSAの表示対象となるWebページを定義します。一番使用頻度の多いものは「URL単位」での指定ですね。自分で「遷移先URL」を決めたい場合に使用しましょう。
すべてのウェブページ
ドメインに含まれるすべてのウェブページで動的検索広告を表示します。サイト全体を「遷移先URL」として指定したい場合はこちらを選択してください。
広告文の作成
最後に広告文を作成しましょう。
1.説明文を入力。
作成が終われば、動的検索広告が配信されます。
なお、DSAの広告文作成では「広告見出し」は作成できません。Googleが遷移先URLの内容から自動で作成します。つまり「説明文」はどのWebページが受け皿になっても良いよう、汎用的な内容を入力してください。
動的検索広告でより効果を出すために
動的検索広告でパフォーマンスを出すための「考え方」「方法」を見ていきましょう。
商材によって戦略は変わるものの、ここでは外せないポイントをご紹介します。
・入札を弱める。
・除外キーワードを設定する。
・除外URLを設定する。
・パフォーマンスの良いキーワードを新たに追加していく。
この4つです。それぞれ見ていきましょう。
入札を弱める
全体的に入札を弱めましょう。
まずDSAでは、無理に入札を高めなくてもCVします。
なぜか?それはキーワードとして設定し切れない「ニッチな検索語句」をたくさん拾えるからです。
更に競合も同じ理由から、これらの検索語句をキーワードとして追加していない場合がほとんど。つまり入札を下げても、問題なく広告が表示されCVを達成できるわけです。
入札を下げる根拠は他にもあります。
DSAは幅広い検索語句を拾うゆえ、意図しないワードでも配信される可能性も否定できません。CVしないワードで入札を高めてしまえば、CPAが悪化します。
つまり「CV数の底上げ」と「CPAの悪化」のバランスを考えれば、入札を弱めて余裕を持つのが望ましいと言えませんか。
私は動的検索広告を使うなら「完全一致」「絞り込み一致」に比べて、弱く配信します。イメージで言えば下図のような形ですね。
ピンポイントに配信するマッチタイプの補助として扱えば、無理なく成果の向上が見込めます。
除外キーワードを設定する
「除外キーワードの設定」は必ず行いましょう。
前項で述べたようにDSAは、CVに繋がらない検索語句をも拾ってしまうからです。
なお除外キーワードは「広告を表示させないワード」を指します。例えば以下のシチュエーションを考えてみましょう。
- 商材は「ギフトのセレクトショップ」。
- 特徴として食品関連は扱っていない。
- 除外キーワードは「食品」を設定。
- 配信方法は「動的検索広告」。
この場合ユーザーが「ギフト 食品」と検索しても、自社の広告は表示されません。
この仕組みをうまく利用することで、DSAにおける「無駄な広告表示」を避けることができるわけです。
私は動的検索広告を活用するなら、次のプロセスを必ず実施します。
- 事前に除外すべきワードを除外しておく。
- 初めのうちは細めに配信データを見つつ、不要な検索語句をどんどん除外していく。
- 以後は定期的に検索語句を確認し、不要なワードを除外する。
- 結果的にCPAの高騰を防ぐ。
幅広い検索語句を拾うことが「攻めの施策」なら、除外キーワードの設定は「守りの施策」と言えるでしょう。
関連リンク
なお、Google広告における除外キーワードについては以下の記事で解説しています。ご参照下さい。
除外URLを設定する
除外作業はキーワードのみならず、「URL単位」でも行いましょう。
DSAでは自動でランディングページが選定されます。言い換えると意図しないページが、「遷移先URL」として設定される可能性もあるわけです。つまり不要なページはあらかじめ除外しなければなりません。
前項と同様に「ギフトのセレクトショップ」で考えてみましょう。仮に「ギフト おすすめ」の検索語句に対し、「プライバシーポリシー」のページが遷移先URLに指定されたらどうなりますか?
絶対CVは起きません。
少し極端な例ですがイメージは伝わると思います。ですからパフォーマンスを担保するために、事前に「適切ではないページ」を除外しておきましょう。
パフォーマンスの良いキーワードを新たに追加していく
パフォーマンスの良い検索語句を発見できたら、キーワードとして追加していきましょう。
この作業を通すことで得られるメリットは複数あります。まずキーワードとして設定すれば、機会損失を防ぎやすくなるという点。
もう一つは、キーワード単体で最適化を図れるようになることです。
仮にDSA経由で、CPAが下がるワードを発見したとしましょう。しかし更にパフォーマンスを高めようとしても、このワード単体の入札は上げれません。なぜなら動的検索広告にはキーワード選定という概念がなく、入札調整は不可だからです。
しかし新たにキーワードとして追加すれば、個別に入札の調整を実施できるので、キーワード毎に最適化を図っていくことが可能。
つまり「DSA」->「CVワードの発見」->「キーワード追加」のフローを経ることで、動的検索広告のメリット(ワードの発見)を生かしつつも、デメリット(入札不可)を打ち消すことができるのです。
私はDSAを使うなら、以下のプロセスを意識します。
- 動的検索広告で幅広い検索語句を拾う。
- 予期しない検索語句でCV。
- CPAが担保できる場合は新たにキーワードとして追加し、入札を高める。
- CV数が底上げされる。(広告表示の機会が増えるから)
- 上記のプロセスを定期的に繰り返す。
- リスティング広告のパフォーマンスが向上する。
仕組みをうまく活用することで好循環を起こせます。
まとめ
今回は「Google広告の動的検索広告」について解説しました。
DSAは「ページ数が多いWebメディア」「商品数が多いECサイト」と非常に相性が良いです。改めて特徴を以下にまとめます。
- 多くの検索語句を拾える。(CV獲得の機会が増える)
- 部分一致よりも成果を出しやすい(CPAを担保しやすい)
また、パフォーマンスを担保するためには次の点にも気を払ってください。
- 入札を弱める。(CPAを担保する)
- 除外キーワードを設定する。(CPAの悪化を防ぐ)
- 除外URLを設定する。(CPAの悪化を防ぐ)
- 高品質なキーワードを新たに追加していく。(CV数を増やす)
既存アカウントとうまく噛み合えば、成果に大きく貢献してくれます。