「ECサイトへの集客はリスティング広告から始める。」
EC専門のコンサルティング会社はこのように推奨します。
理由は検索経由での集客なので、即効性があり、最初のマーケティング施策にぴったりだから。理にかなっていますね。
しかしこのパターンは通用しなくなってきていることも否めません。EC業界に参入し、リスティング広告を始める企業が増えたためです。競合が増えればクリック単価が高騰し、費用対効果が圧迫される。それゆえ失敗する事例も見受けられるようになりました。
そこで私はディスプレイ広告を推奨します。
圧倒的な配信ボリュームを出せ、クリック単価を下げられる。更にディスプレイ広告は奥が深く、力を入れている企業はあまりいません。つまり今がチャンスと言えませんか。
通販はディスプレイ広告を攻略できるかが、これからの重要テーマでしょう。今回は「ECサイトでのディスプレイ広告の成功事例」を紹介します。
CONTENTS
ECサイトへの集客
「新商品として育毛シャンプーを開発したんですが中々売れずでして・・・。社内でリスティング広告を始めましたが赤字の状態です・・・。」
販売会社の社長からご連絡を頂きました。この育毛シャンプーを取り扱っている企業は育毛クリニックも運営しており、実はこの店舗の集客を私が担当しています。
育毛シャンプーは単価が低いこともあり、今回は自分達でもGoogle広告をやってみようということで、勉強がてらに始めた模様。このECサイトはリスティング広告の目標を以下に定めていました。
- 広告予算 : 150万円。
- 目標CV数 : 160件。
- 目標CPA : 9,000円。
そして実際の成果(過去の平均データ)が次になります。
- CV数 : 68件。
- CPA : 22,000円。
CPAが高騰し、商品が売れても赤字の状態が続いていました。
とりあえずやってみよう程度はうまくいかないのがリスティング広告の難しいところ。
商品情報や運用データを頂き、私は分析作業を開始。しばらくして「リスティング広告ではなくディスプレイ広告で勝負だな。」と考え、アカウント再構築のプランを練り始めました。
既存アカウントの問題点
運用がうまくいかなかった原因はどこにあったのか。実はそもそもリスティング広告を使うべきではなかったのです。説明しましょう。
育毛シャンプーを購入するのは薄毛に悩んでいる人。そして薄毛の悩みを解決できる商材は他にもあります。一例を挙げると、
・育毛クリニック。
・育毛剤。
等ですね。これらの商材には共通点があります。販売企業がリスティング広告を実施している場合が多いのです。
育毛は悩みが深い分野。デリケートな内容なので人には言いづらく、見込み客はネットで情報を調べます。言い換えると、悩んでいるユーザーはWeb上にいるため、ネット広告を実施している広告主が多いわけです。
それゆえ育毛シャンプーでリスティング広告を始めるなら、多くの競合と戦わなければなりません。ライバルが多くなるとどうなるか。広告枠の奪い合いが起きるため、クリック単価が高騰します。下図を確認ください。
クリック単価が上がればCPAまで悪化しますね。つまりただでさえ獲得単価が高騰しやすい状況。
これが育毛クリニックへの集客なら問題ありません。なぜなら目標CPAを4万~8万くらいに設定できるため、クリック単価の高騰に耐えられるからです。
一回契約に繋がれば大きな売上が立ちます。育毛クリニックがCPAを高く設定できる所以ですね。
それでは育毛シャンプーの場合は?今回は目標CPAが9000円。要するに許容できるCPAの範囲が低いため、クリック単価が高騰すると、悪影響を受けやすいのです。
実際に既存アカウントの平均クリック単価は600円でした。となると15クリックあれば、最低でも1CVに繋げないと利益が出ません。率直に言って無理な条件でしょう。つまりリスティング広告で攻めるべきではなかったのです。
実施した改善策
それでは私が実施した改善策を見ていきましょう。
前述の内容を踏まえ、今回は初めからアカウントを再構築しました。既存アカウントを引き継いだところで、好転させるのは難しいと判断したためです。
再スタートを切る際に私が意識したのは、育毛クリニックとの競合を避けること。許容CPAに大きな「差」があるので、同じ土俵では勝負できません。今までとは異なるマーケットで戦う必要があります。
そこで目を付けたのがディスプレイ広告の一種であるGDN。実は育毛クリニックの集客では、ディスプレイ広告はほぼ使われません。なぜか。それは高額サービスであるゆえ、検討段階にいるユーザーでなければCVしづらいからです。
このような背景があるため、リスティングの広告枠が奪い合いになっているわけです。そのため競合の少ない潜在層のマーケットで勝負をしようと判断しました。
こう書くと「潜在層はニーズが湧いていないのでCVしづらいのでは?」と思うかも知れません。もちろん正しいのですが要は「やり方」次第。今回実施した施策の一部を紹介します。
・記事LPを用意。
・レスポンシブ広告の作成。
・コンテンツターゲットを実施。
・デバイス別の最適化。
・リマーケティングで追客。
・スマートディスプレイキャンペーンの実施。
この6つ。クライアントにも「結果を見てみたい」とOKを頂き、実行に移していきました。
記事LPを用意
最初に記事LPを用意しました。
記事LPとは
ページ内で潜在層が持つ悩みを解決し、購入意欲を高め、通常LPに繋げる記事。
なぜ記事LPを使用したのか。解説しましょう。
実は潜在層に通常LPを見せてもCVしません。理由は単純で、購入意欲が湧いていないからです。
しかし記事LPを間に挟めば問題は解決されます。広告感を出さない記事内でユーザーの悩みを解決し、商品を購入すれば悩みが消える、と感じてもらえるのですね。
しっかりと作成できていることが前提条件。
言葉を変えればユーザーは記事LPを読み、購入意欲が喚起され、意欲的に通常LPを見るようになる。結果、一気にCVまで到達するわけです。
今回メインで接触するのは潜在層。これらのターゲットに向けて、どのような内容で訴求していくべきか?に主眼を置いた結果、採用したのが記事LPということなのでした。
レスポンシブ広告の作成
レスポンシブ広告を作成しました。
GDNのレスポンシブ広告とは
広告枠に合わせて「広告サイズ」「表示形式」「フォーマット」が調整され、自動作成される広告のこと。
活用をすることで複数のメリットが得られます。第一にクリック単価が下がる。入札競争が起きない配信面に広告が届くからです。
第二に広告の表示機会を増やせます。レスポンシブ広告はあらゆる広告枠に配信できる。それゆえインプレッションを多く出せるのです。
つまりCV獲得の機会が増えると言えませんか。
まとめましょう。レスポンシブ広告を使うことで、クリック単価を下げつつも、CV数の底上げを図れる。それゆえGDNのパフォーマンス向上に繋がります。
参照リンク :
GDNのレスポンシブ広告については以下の記事で解説しています。ご参照ください。
コンテンツターゲットを実施
ここからはGDNのターゲティングを活用してきます。まずはコンテンツターゲットを実施しました。
コンテンツターゲットとは
設定したキーワードに関連するWebページに広告を届ける仕組み。
「育毛」「薄毛」「AGA」関連のキーワードを網羅し、これらのワードを含むサイトに広告を届けました。
育毛シャンプーを買う人は、育毛系サイトで情報収集していることに異論ありませんね。このようにコンテンツターゲットでは、配信面を軸にターゲティングを行う。その結果、育毛に関心のあるユーザーへ接触できるわけです。
そしてレスポンシブ広告を見せ、記事LPで訴求し、最後に通常LPで刈り取る。この流れを確立しました。この作法の成果はいかがなものか。CPAベースで4000円以内を維持。悪くない滑り出しでしょう。
参照リンク :
なおコンテンツターゲットの仕組み、使い方に関しては下記にまとめました。ご参照ください。
私はここで述べたプロセスを、「トピックターゲット」や「カスタムアフィティ」といった手法にも適用し、獲得CV数の向上を図りました。GDNのターゲティングに関しては以下にまとめています。併せてご参照ください。
リマーケティングで追客
リマーケティングを活用しました。
リマーケティングとは
一度サイトに訪れたユーザーに対して、再訪問を促す広告を見せる手法。
実施した理由は、広告で接触したユーザーの取りこぼしを防ぐためにあります。潜在層にアプローチする以上は、ターゲティングの精度を高めても、CVに繋がらない場合も否めません。
しかし訴求し続けることで、気持ちが変わり、購入を決意するユーザーが一定数いるもの。それゆえ適切な頻度でアプローチを繰り返せば、CVの取りこぼしを防げるのです。
商品を知らないユーザーより、サイトに訪れた見込み客へ接触した方が、成約しやすいことに異論はありません。結果はCPAで5000円以下を担保。CV数の底上げに繋がりました。
リマーケティングで見せる広告だけ「リピーター訴求」の内容に変更しました。成果を出すには「細部の調整」がものを言います。
なおリマーケティングに関しては以下で詳細に解説しています。ご参照ください。
デバイス別に最適化を図る
今回はデバイス別に最適化を進めました。スマートフォンを中心に広告運用を展開したのです。ここは丁寧に見ていきましょう。
育毛関連はデリケートな分野なので、ネットに見込み客が集まることは前述した通り。その中でもスマートフォンからのアクセスが大半を占めます。
人に知られたくない内容ゆえ、ひっそりとスマホから情報を調べるためです。
そこでスマホ専用のキャンペーンを作成。その上でほとんどの広告費を消化させました。
見込み客が集まる場所に予算を突っ込むのはマーケティングの常套手段。CV数の増加に繋がると言えませんか。
デバイス別にキャンペーンを作成するメリットは他にもあります。入札の調整を行いすくなるのです。説明しましょう。スマホに見込み客が集まることから、今回はスマートフォンのみの入札を上げました。するとインプレッションが増えCV数が増加したわけです。
逆にPC経由からはあまり成果に繋がりません。そこでPCでは配信を弱めたのです。結果はクリック単価が下がり、CPAの悪化を防げました。
おさらいです。デバイス別にキャンペーンを作成することで「予算配分の調整」と「入札の最適化」を適切に行える。このプロセスを通すことで、よりパフォーマンスの安定化に繋がりました。
参照リンク :
デバイス別の最適化に関しては、下記で詳しく解説しています。併せてご参照ください。
スマートディスプレイキャンペーンを実施
アカウントを整えた段階で、スマートディスプレイキャンペーンを実施しました。
スマートディスプレイキャンペーンとは
アカウント内のデータを元に、コンバージョン数を最大化させることを目的とした配信手法。
記事LPやレスポンシブ広告を使い、潜在層への訴求力を高める。そしてターゲティングの精度を上げ、デバイスの最適化まで図る。ここまで調整をするとCPAが安定します。
このタイミングでスマートディスプレイを利用すれば成果は飛躍的に向上します。なぜでしょう。それはGoogleがデータを学習をし、CVを見込めるユーザーへ広告を届けるためです。
理解を深めるために仕様を紐解きましょう。スマートディスプレイは機械学習により「ターゲティング」「広告作成」「入札」を自動で行い、CV獲得を狙います。
Googleは自動機能の開発を進めていますが、その究極版のプロダクト、と考えるとイメージしやすいですね。
今回はCPAを担保したシチュエーションで実施したので、質のいいデータを学習でき、最大限の効果を得られました。結果はCPA6000~8000円以内を維持。CV数はアカウント内で一番。攻めの施策として納得できるパフォーマンスでしょう。
参照リンク :
スマートディスプレイキャンペーンに関しては、下記にて解説しています。ご参照ください。
改善の結果
改善の配信結果は以下。
- CV数 : 200件。
- CPA : 7,000円。
文句ないパフォーマンスです。クライアントからも高評価を頂け一件落着。
まとめ
今回は「ディスプレイ広告の成功事例」を紹介しました。
Webのマーケットは変化が早いです。一つの成功パターンにしがみついていると、どんどん遅れを取ることに。リスティング広告の効果が鈍化したタイミングが、ディスプレイ広告を始める一つの時期かも知れませんね。
商材に合った戦略を構築し、運用に落とし込めれば大きな成果を刈り取れます。